
Study
生体信号を用いたヨガのストレス軽減効果に関する系統的レビュー

記事作成日
2025年4月3日
私たちが日常的に感じるストレスは、ただ気持ちが疲れるだけでなく、体の健康にも深刻な影響を与えます。ストレスが続くと、不安感が増えたり、睡眠が乱れたり、心臓にも負担がかかったりするため、上手にストレスを管理することはとても大切です。
そんな中、最近も注目されているのが「ヨガ」です。ヨガはただのストレッチや運動ではなく、体と心を整えるために作られたポーズや呼吸法、瞑想などを含む総合的な心身の調整法ですからね。
この研究では、ヨガがストレス軽減にどれほど効果があるのかを、生体信号という身体の客観的な反応から調べた多くの研究結果をまとめています。具体的には、脳波(EEG)、心電図(ECG)、筋肉の活動を測る筋電図(EMG)、脳の活動を画像で見るfMRI、皮膚の電気反応(GSR)など、科学的な測定方法を使いました。
その結果、ヨガの実践によって、脳波ではリラックス状態を示すアルファ波やシータ波が増え、心電図や心拍変動では心拍数が減り、副交感神経が活発になりました。筋電図では筋肉の緊張がほぐれ、fMRIの画像からは脳のストレスや感情を管理する部分が活性化することがわかりました。また、皮膚の電気反応でも交感神経が抑えられてリラックスした状態が確認されました。
つまり、ヨガはただ「気分が良くなる」だけでなく、身体の深い部分からストレスを解消する力があることが科学的に証明されたのです。今後は個人の特性や状態に合わせたヨガの実践方法が研究されれば、より効果的にストレスを減らすことができるでしょう。日々ストレスを感じている方は、ヨガを試してみる価値は大きそうです。心と体が調和することで、穏やかな毎日を取り戻せるかもしれませんね。
下記、研究の要約まとめです。
Reducing Stress with Yoga: A Systematic Review Based on Multimodal Biosignals
Khajuria A, Kumar A, Joshi D, Kumaran SS. Reducing Stress with Yoga: A Systematic Review Based on Multimodal Biosignals. Int J Yoga. 2023 Sep-Dec;16(3):156-170. doi: 10.4103/ijoy.ijoy_218_23. Epub 2024 Feb 9. PMID: 38463652; PMCID: PMC10919405.
【タイトル】
ヨガによるストレス軽減:マルチモーダルな生体信号に基づく系統的レビュー
【背景】
現代社会ではストレスが深刻な問題となっています。ストレスは精神的な健康問題や慢性疾患の原因にもなり、心身に様々な悪影響を及ぼします。このため、ストレスを効果的に管理する方法が求められています。近年では、ヨガや瞑想がストレス軽減に効果的であることが注目され、多くの人に実践されています。しかし、ヨガが具体的にどのように生理学的にストレスに作用するのか、そのメカニズムについてはまだ十分解明されていません。
【ストレスとは?】
ストレスとは、精神的、感情的、身体的な負担を引き起こす変化のことを指します。人は生活の中で様々なストレスに直面しますが、それに対して上手く適応できず、心身のバランス(恒常性)を維持できなくなる状態です。ストレスがかかると、不安や恐怖を感じたり、心拍数が上がったり、睡眠や食習慣が乱れるといった症状が現れます。
【ストレスとヨガの関係性とは?】
ヨガは、身体を動かすポーズ(アーサナ)、呼吸法(プラーナーヤーマ)、瞑想などの心身を調整する実践を含みます。これらの実践は自律神経系に働きかけ、ストレス反応を抑制し、リラックス状態を促進します。具体的には、交感神経の活動を抑え、副交感神経を活性化することでストレスを軽減します。
【方法】
この研究では、ヨガによるストレス軽減効果を、生体信号を通じて客観的に評価した過去の論文を網羅的に調査しています。用いられた生体信号は主に以下の通りです。
・EEG(脳波)
・ECG(心電図)
・HRV(心拍変動)
・EMG(筋電図)
・fMRI(機能的磁気共鳴画像)
・GSR(皮膚電気反応)
調査対象の論文は、ヨガ実践中のストレスレベルを測定するためにこれらの信号を利用しているものを選定し、薬物治療や他のセラピーを併用した研究は除外しました。
【サンプル】
このレビューには、生体信号を用いてヨガのストレス軽減を調べた過去の論文から34本が最終的に選ばれています。
【結果】
ヨガの実践によって以下のような効果が確認されました。
・EEG(脳波)では、アルファ波やシータ波の活動が増加し、リラックスした精神状態が示されました。
・ECG(心電図)とHRV(心拍変動)では、心拍数が減少し、副交感神経の活動が増え、自律神経系がバランスよく調整されることがわかりました。
・EMG(筋電図)では、筋肉の緊張が軽減され、リラックス効果が示されました。
・fMRI(機能的磁気共鳴画像)では、ヨガの実践によって脳の感情制御やストレス反応に関連する領域(扁桃体、前頭前野)の活動が調整されることが示されました。
・GSR(皮膚電気反応)では、交感神経の活動が低下し、リラックスした状態が観察されました。
【考察】
ヨガは単に主観的なリラックスを与えるだけでなく、生理学的な面でも確かにストレス反応を軽減することが示されました。特に脳波や脳活動の変化、自律神経系のバランス調整といった科学的証拠が得られたことで、ヨガのストレス軽減効果が客観的に裏付けられました。ただし、ヨガによる効果は個人差があり、実践するヨガの種類や頻度、個人の体質などによって異なる可能性があります。今後は個人の特性に応じたヨガの処方が重要になると考えられます。
【結論】
ヨガは科学的にも有効なストレス軽減方法であり、生体信号を用いた客観的な評価でもその効果が確認されています。ヨガは心身のリラックスを促し、現代社会で深刻化するストレスを緩和する有望な手段であることが明らかとなりました。今後、個別化したヨガの実践法や他のセラピーとの組み合わせなど、さらなる研究が期待されます。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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