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068:グウグウ理論

気温も上がり、天気が良いと、外でも半袖で過ごすのが気持ちの良い時季ですね。半袖を着る機会が増えると、それに比例して「もうちょっと痩せたいな…」と思う人が増える気がするのですが、皆さまはいかがでしょうか。



先日、初めて知ったのですが、食欲が研究対象になったのは比較的最近のことなんですよね(科学史的には最近ですが、100年前くらいです)。皆さんも今までの人生の中で「食欲は最高の調味料だ」と、一度は言ったことがあるのではないかと思いますが、この言葉のもとになったものは、1375年のスコットランドでジョン・バブアーが詠んだ「食欲以外の調味料は要らない」という詩の一節のようで、僕たちは600年以上も「空腹の時のご飯が一番美味しい」と考えてきたみたいです。



この600年以上の歴史の中でも、“美味しいものには滋養がある”とか、“食欲不振は病気の前触れである”とか、旺盛な食欲は健康の証だとされてきました。そして、ようやく1900年代になって「そもそも体の中の何が空腹感を引き起こすのか?」という疑問を解明する動きが出るのです。1912年に唱えられた初期の説が「グウグウ理論」と呼ばれまして、胃の膨れ具合が食欲のスイッチと関係しているのではないかという仮説で、空腹で収縮した胃の壁が擦れ合わさることにより(グウグウと鳴ることで)空腹感のスイッチが入るのではないかと考えられました。小学生の自由研究じゃないんですよ、大の大人が「グウグウ理論だ」なんて言ってる時代があったと考えるだけで、なんだか穏やかな気持ちになりませんか。



ですが、治療のために胃を切除した患者さんの中には、胃がないにも関わらず、空腹時の胃の痛みを感じることが示された為、このグウグウ理論はすぐに忘れ去られることになります。結果としては、「空腹感に胃は関係ない」ということが証明されることになったわけですが。その後も、「温度定常説」や「糖定常説」など、体内の様々な尺度が、食べるべきタイミングを知らせようとするという理論が提唱されてきました。



それで、結局どうなのよ?ということですが、今日では、一説によると「人間の食欲は5種類ある」と考えられ、「生存に必要な栄養素を得るために、特定の風味に照準を合わせるように食欲がつくられているのではないか」と考えられています。生存と健康に必要な栄養素は数十種類にも及ぶのですが、それらを一つ一つ常時摂ろうとすると気が狂ってしまうので、生体システムを効率的に機能させるために5つの栄養素(食欲)に絞っているのではないかという説です。



主要栄養素として「たんぱく質」「炭水化物」「脂質」、重要な微量栄養素として「塩(ナトリウム)」「カルシウム」を摂れるように、生存に必要なものを食べる為の案内役として、食欲がその特定の風味を欲するように機能しているのではないかと考えられます。いわゆる「体が欲するものを食べることが健康にいい」と唱える方が正しいように聞こえてきそうですが、選択できる食品が多い現代においては、味覚とカロリーに翻弄されやすい状況です。



そんな、気になる方が多いであろうカロリーに関する話は、また次回のメルマガにてお伝えできればと思います。


Sahanaメルマガ vol.203(2021年5月)より

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